5月 14

空調機のチューニングポイント〔其の6〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

不快指数冷房(1)
1、冷房とは
冷房とは温度を下げることだと思っている人が多いのではないか。
しかしここで、冷房とは温度を下げることではなく、空気のエネルギー量を下げることだと思うように頭を切り替えてはどうだろうか。そうすれば新しい冷房の仕方が見えてくるだろう。
この空気のエネルギーがエンタルピである。
エンタルピは温度だけではなく湿度にも関係してくるので、湿度のコントロールが重要となる。
不快指数冷房は温度と湿度と不快指数とエンタルピを総合的に考え、エンタルピをできるだけ下げないようにしながら、不快指数を下げるように温度と湿度をコントロールして、省エネと快適性を両立できるようにすることがポイントなのだ。温度だけを基準にする冷房ではないのが、不快指数冷房の特徴である。
2、湿度制御
一般的な空調機ならば冷房時は温度を制御するだけで湿度までは制御していないだろう。冷房で湿度を制御するのは、電算室や保存庫などの恒温恒湿の部屋ぐらいであり、居室よりも低い温度の場所であることが多いだろう。
暖房時ならば加湿をして湿度を維持するということも可能である。設定湿度になるまで加湿を続ければよいのだが、外気導入量が多くて外気が乾燥しているとなかなか設定湿度にならないことがある。特に温度と湿度の設定値が高い場合はそうだろう。温度が高いと相対湿度が低くなり、湿度の設定値までが高いと、絶対湿度をかなり高めなければならなくなるので、いくら加湿をしても追いつかないのだ。
湿度が追いつかないのならば室温を上げるように自動制御できれば室内空気のエンタルピは保てるが、そのような温度制御ができる空調機はないだろう。よって室内は設定湿度よりも低い湿度になり、室内エンタルピも一定に保つのは難しくなる。
冷房の場合は暖房とは逆に除湿となるので、除湿量をコントロールするのがさらに難しい。
暖房のように温度と湿度を個別に制御できるならばまだやりようがあるが、冷房の場合は温度の制御だけで、制御をすることができない湿度まで制御しなければならないからだ。
3、不快指数と省エネ
冷房温度は28℃にするようにといわれているが、28℃では暑いので湿度を下げて快適にするというビルもあるだろう。つまり温度を下げる代わりに湿度を下げて快適性を維持するという方法である。果たしてこの方法が省エネになるのかを、省エネの観点から考えてみたい。
冷房するということは除湿するということでもあるので、湿度を下げることはできるだろう。
しかし温度を28℃に保ったまま湿度を下げたときのエンタルピはかなり低くなる。冷房が空気のエネルギーを下げることだとすれば、エンタルピが低くなるということは冷房のエネルギーを多く使うことにもなる。湿度を下げるだけでもエンタルピが下がるので、快適にはなっても省エネにはならないのだ。
4、不快指数の計算方法
不快指数とは体感的な温度を数値にしたもので、計算方法が何通りかある。
空気環境測定時に湿球温度を測定しているのならばこの式を使えば計算が簡単だ。

不快指数=0.72×(乾球温度+湿球温度)+40.6

相対湿度しか分からない時は、少し計算が長くなるが下の式のどちらかを使えばよい。

不快指数=0.81×温度+0.01×相対湿度(0.99×温度-14.3)+46.3

不快指数=1.8×温度-0.55(1-相対湿度/100) ×(1.8×温度-26)+32

4月 02

空調機のチューニングポイント〔其の5〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

加湿(4)

9、滴下式

滴下式とは写真―4のように上から滴下する水が膜に浸透しながら蒸発する加湿方式だ。

 

写真―4 空調機の加湿用浸透膜

あるビルで加湿運転している空調機の浸透膜が見えるように点検口を開けて確認したところ、かなりの量の水が蒸発せずに浸透膜下部より落下して排水口に流れていた。

 

写真―5 空調機内部の排水口

写真―5のように排水口の周囲が濡れているのが蒸発しなかった水であるが、多分この水は暖房給気温度に近い水温であろう。

写真―6の加湿用給水栓を調べたところ全閉から全開までが9回転で殆ど全開の位置に調整されていた。これを全閉にしてから徐々に開いていったところ、半回転開けても水が出なかったが、これは水栓の遊び部分であろう。それから1/4回転開けると水が流れてきた。

全閉から僅か3/4回転開けただけであるが、これだけの給水量でも水は完全に蒸発せずに浸透膜下部から垂れて排水されていた。1/4回転開ではこれ以上閉める訳にもいかず、外気湿度によっても蒸発量は変わってくるので、この程度の排水量は仕方がない。

 

写真―6 加湿用給水栓

給水量の違いを実感するために家庭の水栓を1/4開けたときと全開にしたときの水量を比較すれば、この給水量の差がどれだけの日使用量になるのかは想像できるだろう。

給水栓全開での無駄な垂れ流し状態が見えているならば誰でも無駄だと思って給水栓を絞るだろうが、運転している空調機の加湿状況は空調機に点検口がなければ見ることはない。

停止中となると加湿も停止しているため気が付くこともないのである。

10、4台の加湿チューニング効果

11台ある空調機の内4台が滴下式である。この4台の加湿用給水栓を調整したが、室内湿度も以前と変わっておらず、給水が多ければよい訳ではないことが実証できた。滴下式でも少ない給水量で湿度は維持できるのだ。

11・12月は前年比で上水使用量が6.9%も増えていたが、加湿チューニング後の2・3月は12.6%も減り、かなりの節水効果があった。熱は前年度の2・3月と比較して4%減であった。前年よりもかなり寒い年であったが、これも加湿チューニング効果なのであろう。

4月 02

空調機のチューニングポイント〔其の4〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

加湿(3)

7、総合図書館の上水使用量

表-1は総合図書館における平成10年度と平成20年度の上水使用量を比較したものだ。

館内湿度は40%ぎりぎりを維持している。

1・2月は常時加湿をしている時期であり、7・8月は加湿することはないため、比較に使用するには最適な時期である。

地域冷暖房のため冷却塔はなく、トイレは中水を使っている。加湿以外での上水使用量は、図書館利用者が直接使うものが殆どでなので、来館者数により増減する。

  平成10年度 平成20年度
7・8月使用量 520㎥ 453㎥
7・8月開館日数 52日 52日
7・8月の日使用量 10.0㎥/日 8.71㎥/日
1・2月使用量 1,196㎥ 495㎥
1・2月開館日数 46日 46日
1・2月の日使用量 26.0㎥/日 10.76㎥/日
日使用量差 16.0㎥/日 2.05㎥/日

表-1 上水使用量

この表によると平成10年度と平成20年度の、加湿をおこなっていない7・8月の上水使用量は520㎥と453㎥で13%減となっているが、加湿期の1・2月を比べてみると平成10年度の1,196m3に対して平成20年度は495m3と半分以下にまで減っている。開館日当りの日使用量差を比較すると16 m3/日-2.05 m3/日=14.05m3/日となり、こんなにも減っているのだ。この上水使用量の差が全て加湿によるものだと断言はできないが、加湿チューニングが大きな要因であることは間違いないはずだ。

冬季と夏季の日使用量の差が加湿に使用している水量だとすれば、平成10年度はこれだけの水が蒸発せずに空調機内で温熱を奪い温水となって排水されていたことになる。この数値をみればいかに効率よく水を蒸発させることが大切なのかが分かるだろう。

8、疑問点

ただし表-1の数値には疑問点があるので説明したい。

7・8月は学校が夏休み期間中であり来館者が最も多くなる時期である。それに比べて1・2月は来館者が多いとはいえない時期である。

来館者が多ければ水の使用量が増える訳だから、7・8月のほうが1・2月よりも多くなるはずである。よって、日使用量の少ない1・2月と日使用量の多い7・8月の数値を比較することは正確とはいえない。よって7・8月の日使用量を少なくするか1・2月の日使用量を多めにして計算するほうが正確であろう。

次に開館日の日数で割ることにも若干の疑問が残る。休館日であっても一部の空調機は運転しており、十数名の人が居るのであるから、開館日より少ないとはいえ水の使用量はゼロではない。しかし条件的には1・2月も7・8月も同じであり、休館日の使用量は開館日と比べて極端に少ないため無視することにした。

これらの疑問点があることを考慮して計算すれば、平成10年度と平成20年度の日使用量差は、表-1での計算値14.05m3/日よりも増えることになり、15m3/日以上になるのではないかと推測する。つまり加湿チューニングをおこなう以前は15m3/日以上もの温水を無駄に捨てていた可能性があるのだ。

ビルの規模や用途、加湿装置の種類、加湿状況、設定温度・湿度によっても違ってくるので、あくまでも参考の数値と思っていただきたいが、もし60℃の熱コイルにスプレーしても蒸発しなかった、これだけの量の温水が捨てられているとすれば、どれだけの熱エネルギーを捨てていることになるのだろうか。

気が付かないままに、これが現実となっているビルがないとは限らない。

2月 19

空調機のチューニングポイント〔其の3〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

加湿(2)

3、蒸発する水、しない水

加湿は主にスプレー式と滴下式と蒸気式の三方式であるが、殆どのビルはスプレー式と滴下式だろう。この方式は水が蒸発することにより気化熱が温熱を奪うので暖房負荷になるが、暖房負荷になるのは気化熱だけではないのだ。確かに水の蒸発だけを考えれば気化熱だけかもしれないが、蒸発していない水のことも考慮しなければならない。加湿をおこなっている水には蒸発する水と蒸発しない水があり、その両方が暖房負荷になっているのだから、蒸発しない水での省エネをおこなえば、湿度を維持しながらでも節水と省エネが可能なのだ。

4、暖房時の加湿

空調機内部でスプレー式加湿をおこなっている場合、このスプレーされた水がどれだけ蒸発しているか考えたことがあるだろうか。

殆ど蒸発していないのが実情である。

暖房時の熱コイルに60℃の温水を流しているビルもあるが、この60℃の熱コイルにかかった水が蒸発せずに排水されているとしたら、その排水量と排水温度がどのくらいなのかを想像してほしい。これが無駄に捨てられている水と熱エネルギーなのだ。

5、排水温度

総合図書館で暖房時の加湿をおこなっていた日のことであったが、スプレーされた水が蒸発せずに排水されていたのを見て温度を測ってみると給水温度以上に高くなっていることに気が付いた。蒸発しなかった水が熱コイルから熱を奪って排水されることは当然のことであるが、これに今まで気が付かなかった。簡単すぎるが故に盲点となっていたのだ。

総合図書館では暖房時の熱コイルに流れる温水温度は30℃以下と非常に低い温度のために、排水される水の温度もそれほど高くはないが、温水温度が高くなればなるほど排水温度が高くなるので、それだけ捨てる熱も増えるだろう。低い温水温度で暖房が可能ならば、それだけ捨てる熱も減るだろう。

6、噴霧ヘッド

スプレーが熱コイルにかかると、温熱を奪うだけではなく、水のシリカ分が熱コイルのフィンに付着して熱交換効率が落ちてしまうため、噴霧ヘッドの角度を調整してスプレーが熱コイルにかからないようにすればよい。シリカの付着がなくなりフィンの清掃も楽になる。

ヘッドの間隔も隣接したヘッドが近過ぎると、スプレー同士がぶつかり合った結果、スプレーの粒子が大きくなり、蒸発効率が落ちるので、スプレー間の距離を開けるためにヘッドを取り外したり、ヘッドを塞いだりしながらスプレー同士がぶつからないようにしたい。スプレーしているヘッドの数が減れば、ヘッド1個当たりの水圧が上がり、水の粒子が細かくなって蒸発効率がさらに良くなるだろう。

写真―1 空調機内部の噴霧ヘッド

総合図書館では写真―1のように14個も噴霧ヘッドがあった空調機を、僅か4個のヘッドに減らしてスプレーしてみたが、暖房時の加湿の立ち上がりも室内湿度も以前と変わっていない。加湿は給水量ではなく蒸発量であり、効率的に蒸発させれば、より少ない給水量で加湿ができることを実証できた。実際におこなえば節水効果も非常に大きく、無駄に捨てている水がどれだけ多いかが実感できるだろう。

1月 05

空調機のチューニングポイント〔其の2〕

加湿(1)

1、加湿と省エネ

暖房時の加湿は水の気化熱が温度を下げる要因となって暖房負荷になるため、加湿をしない方が省エネになると思われている方も多いだろう。しかし省エネのためだからといって、加湿をおこなわなければビル内の湿度は40%を維持できなくなる。たとえ省エネのためであっても空気環境を適正に維持できないようなことがあってはならないので、ビルメンテナンスに携わる者としては、加湿をおこないながらも暖房負荷の削減に努め、空気環境も基準値を保てるように努力する必要がある。

外気条件が同じで室内湿度を一定に維持するならば水の蒸発量は同じである。水の蒸発量が同じならば気化熱量も同じになる。気化熱量が同じならば暖房負荷も同じである。よって湿度設定を低くする以外に暖房負荷を減らすことはできないと思っているかもしれないが、この考え方には間違いがある。ここがポイントなのだ。

2、 加湿方式

ビルの加湿方式としては主に次のような方式が用いられている。

写真-1 スプレー式

スプレー式は写真-1のように加圧ポンプを使って圧力を上げ、ノズルより水を噴霧して蒸発させる方式である。この方式はノズルが詰まることであるので、定期的な分解整備が必要となる。チューニング次第では最も大きな省エネと節水が期待できる方式である。

写真-2 滴下式(浸透膜式)

滴下式(浸透膜式)は写真-2のような浸透膜の上部より水を滴下させながら、浸透膜を通過する空気により蒸発させる方式である。スプレー式に次いで省エネ効果が期待できる方式であり、チューニングも簡単だ。

写真-3 蒸気式

写真-3の右下にあるのが蒸気加湿用のスチーム配管である。蒸気式の加湿はボイラー等の熱源があるビルに限られるため、ホテルや病院で主に採用されている。

空調機内で水を気化させるわけではないので、蒸気加湿は加熱となる。加湿が過熱の原因となるので、温水を使用した暖房では循環温水の温度と流量を極力抑えた暖房を行いたい。湿度設定が高過ぎると蒸気加湿だけで室温が上がり、冬なのに外気冷房しなければならなくなる場合もあるので注意が必要だ。

12月 20

空調機のチューニングポイント〔其の1〕

ウォーミングアップ

1、 ウォーミングアップの意味

ウォーミングアップは空調機運転開始時にOA・EAのモーターダンパーが開くのを遅らせて外気負荷を減らすものだ。暖房時ではスプレー式や滴下式の加湿も同様に遅らせて、空調の立ち上がりを早くすることができる。

このようなウォーミングアップを総合図書館では全くおこなっていない。

排気ファンがある以上は、ビルは負圧になるものだ。ウォーミングアップをおこなって空調機から外気を入れないようにしても、負圧のビルは必ず外気が侵入するので、ウォーミングアップをしても意味がない。外気負荷を減らしているつもりが、外気が侵入して、実際は外気負荷が全く減っていないということもあり得るのだ。空調機からのOAも侵入外気も同じ外気である。どうせ入って来る外気ならば、負圧にならない程度に空調機経由で入れた方が、フィルターを通って来るだけましである。

2、 必要な季節

一般的にウォーミングアップが必要なのは夏季よりも冬季である。夏季ならば空調運転開始と同時に外気を入れても、早朝の外気温度はビル内温度よりも低い場合もあり、ウォーミングアップをしないほうが省エネ的にも換気的にもよい場合がある。しかし冬季の早朝外気温度は低いため、ウォーミングアップをおこなわなければ、冷たい外気が入って来て、循環温水温度が上がるまでの間は外気冷房運転状態になってしまう。つまり冬季はウォーミングアップをおこなうほうがよいのだが、外気を入れない代わりに外気が侵入するようではウォーミングアップにならないことは前述した。

3、 総合図書館のウォーミングアップ

総合図書館では全く違った意味でのウォーミングアップをおこなっている。

空調機二方弁のバイパスを少し開けて、空調機を停止させたまま二次ポンプだけを動かし、温水だけを循環させているのだ。

空調機を運転しながらでは中々上がらない温水温度も、空調機が停止していれば水温が直ぐに上昇する。水温が上がるまでの間ウォーミングアップ運転するのではなく、最初から水温が上がっているから、従来のウォーミングアップは必要ない。空調機を運転せずに温水だけを循環させることで、配管内の水温を上げると同時に空調機内を暖めることがウォーミングアップとなっているのだ。このようにしておけば空調機運転開始と同時に温風が出るため、従来のように空調機を運転しながらのウォーミングアップの時間は空調機を停止させて、少しでも運転開始時間を遅らせることができる。

このウォーミングアップをおこなってからは空調機電力と熱の削減になり、冬に外気冷房することもなくなった。

4、ウォーミングアップ時間

地域熱供給ならば24時間熱が供給されているので、二次ポンプを運転しておけばよい。

ボイラーや吸収式冷温水機などの熱源があるビルならば、熱源と循環ポンプだけを運転して、どのくらいの時間で水温が上がるのかを見てから、熱源の起動時間を逆算で決めればよい。

全ての空調機を暖めるのに要する時間は、往還配管の還水温度が往水温度と変らない温度になるまでが目安で、これでウォーミングアップ完了である。この状態になってから空調機を運転すれば即暖房開始である。

5、ウォーミングアップの目的と注意点

このウォーミングアップの目的は熱源と空調機の運転開始を少しでも遅くすることにある。これを冷房時に行えば空調機運転と同時に冷房開始となるので、暖房時と同様に空調運転を遅らせることができる。しかしバイパス弁を開けすぎると無駄な冷暖房となることがあるので開度調整には十分な注意が必要だ。

冬季のウォーミングアップは必要であるが、一般的なウォーミングアップを行うよりも、ウォーミングアップ時間そのものを無くすためのウォーミングアップをおこなったほうが省エネになることをぜひ試していただきたい。

12月 20

窓のチューニングポイント〔其の2〕

ブラインドとカーテン

コンピューター室のように室内温度が低い部屋でブラインドとカーテンを併用した場合の保温効果を前号と同様にして調べてみた。

カーテンはブラインドのように隙間がないために保温効果はあるが、カーテンだけでは色的に日射を吸収する難点もある。そこでブラインドの反射効果とカーテンの保温効果を併用することで相乗効果が期待できるはずだ。

1、ブラインドとカーテンの保温効果
 
写真-1 窓ガラス

 調査したビルのコンピューター室は東側に窓があるが、写真-1のように向かい側直ぐ近くにビルがあるため日射が入る時間は僅かな間だけである。温度測定は平成23年8月9日午後4時頃におこなったので外気温度は高いが、日射の影響は全くない。

2、ブラインドを下ろして完全に閉める
 
写真-2 ブラインド

 写真-2のようにブラインドを下ろしてスラットを完全に閉めた。ブラインドだけでも保温効果があることは前号で実証済みだが、コンピューター室のように室温が低いと、それだけ屋外との温度差が大きくなるので、熱の侵入量も多くなるはずだ。そこで写真-3のようにブラインドの手前に遮光カーテンを床面までの長さで新たに取り付けて、ブラインドとカーテンによる二重の保温効果がどれだけあるかを調べてみた。光を通さない遮光カーテンのほうが通常のカーテンよりも保温効果が高いはずであり、床面までの長さにすることでカーテン下部での隙間もなくなる。

3、ブラインドの手前にカーテンを取付ける
 
写真-3 遮光カーテン

 コンピューター室の温度が22.2℃で、カーテンとブラインドの間の温度が27.7℃で、ブラインドと窓ガラスの間の温度が30.2℃だった。カーテンを挟んでの温度差が大きいのが分かる。

外気温度が33.2℃前後であったので、室内との温度差は11℃である。窓ガラス1枚を挟んでの11℃差と、窓ガラス+ブラインドを挟んでの11℃差と、窓ガラス+ブラインド+遮光カーテンを挟んでの11℃差では当然に保温効果が違うので、屋外からの熱の侵入量も違ってくるはずである。

コンピューター室のように室内温度が低い部屋はブラインドと遮光カーテンを併用した二重の空気層による保温対策を推奨する。

保温の必要がない冬季は、カーテンとブラインドを開けて、窓ガラスで熱交換させるようにしたい。部屋毎・季節毎に設定を変えるのは当然だ。

10月 13

ビルの省エネ指南書(17)

  窓のチューニングポイント〔其の1

窓とブラインド

  外気温度が33.2℃と高い日に温度測定を行ってみた。天候は晴れたり曇ったりで、常時日射があったわけではない。

センサーは正確性と感度を重視して熱電対センサーを使うことにした。センサー部分が細くて長いのでブラインドの隙間に入りやすく、ブラインド効果が正確に分かるだろう。

1、ブラインド室内側の温度を測定

最初はブラインドが閉まっている状態から測定を開始することにする。

 写真-1 ブラインドを閉めた室内側温度

写真-1は平成238811時台の温度である。28.9℃で少し高めの温度であるが、ブラインドが閉まっているといっても写真のような隙間が多い状態であり、ブラインドの直ぐ手前であることと、部屋の隅であるため冷気が届き難いことも影響して温度が高くなっているようだ。温度よりも温度差を調べることが目的だが、同じように測定しても測定場所や室内温度と気流、屋外条件によっては違う結果になるだろう。

2、ブラインドと窓ガラスの間で測定

先ほどの状態のままで温度センサーをブラインドの隙間から窓ガラス側に入れて、窓ガラスとブラインドの間の温度を測定する。

窓が南向きのため、センサーが直射日光の影響を受けないように、窓枠の陰になる位置にサンサーがくるようにして測定した結果、温度が32.1℃となっており、ブラインド室内側と比べると3.2℃高い温度である。

  写真-2 ブラインドを閉めた裏側で測定

前回測定した時は天候が曇りで外気温度が30.7℃であった。その時は2.7℃の差であったが、外気温度が高くなるほど窓とブラインド間の空気層の温度が高くなるので、室内側との温度差が大きくなっている。

 3、ブラインドを水平にして室内側で測定

今度はブラインドのスラット(slat)を水平にして、十分に時間をとってから測定した。スラットの間から空気が流れ、熱の移動が終わるのを待ってから温度を測定するためである。

  写真-3 ブラインド水平での室内側温度

  写真-3の表示が見難いが28.9℃である。

意外にもブラインドを閉めて測定した結果と同じであった。窓側の熱が室内側へ漏れているはずだが、漏れた熱は室内側の冷房に吸収されて温度が上がるまでにはなっていない。

4、ブラインドを水平にして窓側で測定

  次に、スラットを水平にした状態のままでブラインドと窓ガラスの間の温度を測定した。

水平になったスラットの間からセンサーを入れ、スラットを閉めて測定した時と同じく、窓枠の陰にセンサーがくるようにした。

  写真-4 ブラインドを水平にして窓側で測定

  温度が31.5℃となっておりブラインド室内側と比べると2.6℃高い温度である。スラットを閉めていた時が3.2℃高かったので0.6℃低くなっている。外の景色が完全に見える状態なのに2.6℃の差を保っていることに注目したい。スラットを閉めたほうが窓ガラス面の気流は減るのだが、スラットを水平にするだけでも、ブラインドと窓ガラス間にある空気層の気流を減らす効果があるようだ。これならば外の景色も見えるので開放感があり、明かりが入ってくるため窓側の照明を減らすことも可能だ。

スラットが水平でも窓ガラスとの間に気流がなければ空気層の温度を保ち保温効果があるが、扇風機の風やファンコイルの給気を窓側に向けると水平のスラットでは風を遮ることができず、室内側の空気が窓ガラス側に一気に流れ込み、空気層に気流を作ると保温効果がなくなるので注意が必要である。

5、ブラインドを完全に上げて窓側で測定

ブラインドを完全に上げて、先ほどと同じセンサーの位置にして温度を測定した。

写真-5のように温度が28.8℃である。ブラインドを完全に閉めた時や水平に使用した時の室内側の温度よりも0.1℃低くなっている。

  写真-5 ブラインドを上げて窓側で測定

  ブラインドと窓の間にあった空気層は瞬時に室内空気に吸収されてしまったのだ。ブラインドは日射防止に役立つだけではなく、窓ガラスとの間の気流を抑制することで空気層を作り、空気の移動を遮って保温する効果があることが分かる。

冷暖房時は日射の有無に関係なく、常にブラインドを下げてスラットを水平使用し、日射のある時や終業時には閉めるようにするのが省エネになるようだ。

ブラインドの上げ下げは大変だがスラットの角度調整だけならば簡単である。スラットの水平使用ならばブラインドを上げた場合と明るさも殆ど変らず、見た目も気にならないために、室内環境を変えない簡単な省エネ対策として非常に有効である。

 6、ブラインドを完全に上げて窓の外を測定

最後に窓を少し開けた隙間からセンサーを外に出して測定した。この屋外温度33.2℃の熱の侵入をブラインドで防ぐことができるのだ。

  写真-6 窓の隙間から屋外を測定

9月 02

ビルの省エネ指南書(16)

ファンコイルのチューニングポイント〔其の2〕

1、ブラインドの効果

ブラインドの効果がどのくらいあるのかを確かめるために、温度を測ってみることにした。

天候は曇りで日射はなし。

測定する窓ガラス面の直ぐ外側の外気温度が30.7℃。

ブラインドを完全に下して閉めた状態で、窓ガラスとブラインドの間が29.9℃。

窓ガラスを挟んで外気温度との差は僅か0.8℃しかなく、外気温度が窓ガラスを通過して入って来ていることが分かる。

ブラインド直ぐ手前の室内温度は27.2℃。

ブラインドを挟んでその差は2.7℃。

閉めたといっても、スラットの間がかなり隙間のある状態でもこれだけの温度差がある。

ブラインド自体の温度を放射温度計で測ると28.8℃で窓側から測っても、室内側から測っても同じであった。スラットは薄い金属なので温度差が出ないのだろう。ブラインドの窓側と室内側の空気温度と比較すると僅かだが窓側に近い温度である。

屋外には気流があり、室内にも気流があるが、窓ガラスとブラインドで挟まれた間には殆ど気流がないために、この空気の層が両者の間で熱を伝えない役目を果たしているようだ。ブラインドは日射を反射するだけではなく保温効果もあるのだ。日射が無くてもブラインドは下しておいたほうが冷房の省エネになるだろう。

2、ファンコイルの給気方向

もしブラインドが無ければどうなるだろうか。屋外にも室内にも気流があるのだから窓ガラス面で熱交換するであろうことは想像できる。特に室内側の気流が大きければ大きいほど熱交換量も増えるだろう。

このような状態の窓にファンコイルの給気を向けると、給気温度が低いために熱交換量がさらに増えるはずだ。

ブラインドは下げるほうがよいが、スラット間に隙間があるため、下げるだけでは不十分であり、風を当てないように注意する必要がある。

窓ガラスは空気を通さないが、ブラインドは隙間から空気を通すからである。

このブラインドに扇風機の風を当てると、窓ガラスとブラインドの間に気流が生じて、窓ガラス手前の空気温度が下がり、その空気が窓ガラスとの間で熱交換することになる。

ファンコイルの給気をブラインドに当てると、室温よりもさらに低い温度の空気が流れて、窓ガラス面で熱交換することになってしまう。

ファンコイルに流れる冷水温度が7℃だと給気温度は10℃以下であろう。給気温度が低ければ低いほど窓ガラスとの温度差が大きくなるため熱交換量も多くなる。このことからも冷水温度をできるだけ上げたほうが、ファンコイルからの給気温度が上がるので、熱交換量が少なくなるだろう。勿論、ファンコイルからの気流を窓に向けないことが一番である。

3、窓ガラスは熱交換器

窓ガラスの屋外側を一次側、室内側を二次側とすると、屋外である一次側の温度も気流も変えることはできない。しかし、窓ガラスが熱交換器ならば、二次側に気流がなければ熱交換しないはずだ。扇風機の風やファンコイルの給気を窓に向けるということは、二次側に気流を作ることになり、外気と熱交換してしまうのだ。

特に日射の当たっている窓の室内側に気流があると最悪である。扇風機の風を当てると暖房をしているのと同じで、室温が上昇するだろう。室内温度の空気を温度の高い窓ガラスに当てるのだから温度が上がって当然である。

ファンコイルからの気流ならば扇風機よりも温度が低いため熱交換量が増えて、全く冷房効果が期待できなくなるだろう。

触らぬ神に祟りなしというが、窓ガラスの温度は自然の外気条件次第である。自然に逆らっても意味がないことなので、窓ガラスには触らないようにすればよい。そのためにもブラインドの有効利用を心がけたい。

8月 01

ビルの省エネ指南書(15)

ファンコイルのチューニングポイント〔其の1

機械室(2 

5、系統毎の流量制御

冷温水温度だけではなく流量も制御できればさらに効果がある。


図-1 同一のポンプで送水

図-1のように空調機系統と同一のポンプで送水されているのならば空調機も含めた全体としての流量調整を行いながら、ファンコイル系統のバルブや各階のバルブで、空調機だけでは室温を維持できない場合の不足分を補うだけの最小限の流量に調整すればよい。

6、ポンプでの流量調整


図-2 個別のポンプで送水

図-2のように空調機とファンコイルの二次ポンプが個別にあるのならば、ファンコイル系統のみの流量を簡単に調整することができる。ファンコイル系統のポンプがインバーター制御ならばバルブで調整するよりもインバーターの最高周波数を部屋の冷房状況をみながら少しずつ下げていけばよい。

図-2のような設備構成では、一次ポンプ1台よりも二次ポンプ3台のほうが、流量が多くなるだろう。この場合は還ヘッダから往還ヘッダバイパスを通って直接往ヘッダに冷水が廻り込むために、往ヘッダの冷水温度は吸収式冷凍機からの冷水と往還ヘッダバイパスを通った還水が混合されて、少し高めの冷水温度になる。往水温度は還水温度の変化と同様に変化することになるため、一定温度の冷水が送れないという問題がある。

7、バイパスバルブでの流量調整


図-3 ファンコイル用ポンプを停止

図-3のようにファンコイル系統の循環ポンプを停止させて、一次ポンプの圧力で送水してみるのもよい。一次ポンプのほうが二次ポンプ1台よりも流量が多いだろうから、往還ヘッダバイパスには図-2とは逆方向に冷水が流れることになり、往ヘッダの冷水温度は吸収式冷凍機の出口温度と同一の温度となるため、安定した温度の冷水が送れることになる。ファンコイル系統への流量調整はヘッダのバイパス弁でおこなうのだ。バイパス弁を閉じていけば還ヘッダへの廻り込みが減るのでファンコイルへの流量が増え、開ければ廻り込みが増えて流量が減るのだ。ポンプを停めて流量調整するので、ポンプ電力が不要となる効果がある。

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